超高速分光グループ
極短パルス光を用いた分光実験による分子の励起状態ダイナミクスの観測と制御
松﨑 維信
化学反応を理解するためには、分子の電子状態と構造の両面で時々刻々の変化を追跡することが本質的に重要です。このため超高速分光チームでは、光と分子との相互作用に基づいた物理化学的手法を基盤とし、常に最先鋭のレーザー技術と光技術を駆使した極限的かつ新しい分光方法論を開発します。これにより、基本分子からタンパク質にいたる様々な反応分子系の新しい現象を可視化し、背後にある精巧な分子メカニズムを解明し、制御することをめざします。
研究概要
化学反応を理解するためには、《どのような速度で、どのような電子状態・分子構造を経て生成物が生じるのか》という反応ダイナミクスの解明こそが本質的に重要です。このような考えにもとづいて、極限的に短い光パルスを用いた時間分解分光を基盤とする物理化学的手法により、光励起分子に対する基礎的なダイナミクスの研究を行います。また、最先鋭のレーザー技術、光技術を取り入れた新しい分光手法の開発を進め、それにより、反応分子の基本的かつ新しい現象を観測し、理解し、制御することを目指します。特に超高速反応では、有限時間を要する核の動きを時々刻々と観測し、連続的な構造変化を可視化することが反応を理解する上での鍵となるため、複数パルス光を用いた瞬時構造に対するラマン分光や誘導放出遷移を利用した励起分子の検出などの最先端分光を駆使し、《反応の途中》に迫ろうとしています。そしてその先に、反応の速度や収率を左右する遷移状態に対する実験研究に途を拓くことを目指しています。
研究項目
極短パルス光発生と多色高時間分解分光装置
超高速光化学反応におけるコヒーレント核運動の観測
反応分子の実時間構造追跡
複雑分子系の超高速励起状態ダイナミクス
メンバー
松﨑 維信(グループリーダー)
Garima Bhutani
Jan-Hendrik Borter
主な発表論文
- H. Kuramochi; T. Tsutsumi; K. Saita; Z. Wei; M. Osawa; P. Kumar; L. Liu; S. Takeuchi; T. Taketsugu; T. Tahara
Ultrafast Raman observation of the perpendicular intermediate phantom state of stilbene photoisomerization
Nat. Chem. 16, 22 – 27 (2024). - P. Kumar; H. Kuramochi; S. Takeuchi; T. Tahara
Photoexcited plasmon-driven ultrafast dynamics of the adsorbate probed by femtosecond time-resolved surface-enhanced time-domain Raman spectroscopy
J. Phys. Chem. Lett. 14, 2845 – 2853 (2023). - C. Chang; H. Kuramochi; M. Singh; R. Abe-Yoshizumi; T. Tsukuda; H. Kandori; T. Tahara
A unified view on varied ultrafast dynamics of the primary process in microbial rhodopsins
Angew Chem. Int. Ed. 61, e202111930 (2022). - K. Matsuzaki; T. Tahara
Superresolution concentration measurement realized by sub-shot-noise absorption spectroscopy
Nat. Commun. 13, 953 (2022).